私と外国語

蘭学事始

齋藤文俊(人文学研究科)

私の専門は日本語学、特に漢文訓読によって生じた語法などを研究しています。そんな私が、もうかなり前、突然オランダ語を勉強してみたくなりました。

それは、漢文訓読を中心にした日本の翻訳の歴史についての講義をするにあたり、江戸時代の蘭学者たちが、オランダ語をどのように勉強したのかを実際に体験してみたくなったのです。

「蘭日辞典」もなく、オランダ語の先生もいない状況下、前野良沢や杉田玄白はどのようにオランダ語を学んだのか。杉田玄白の『蘭学事始』には、「誠に艪舵なき船の大海に乗り出だせしが如く、茫洋として寄るべきかたなく、たゞあきれにあきれて居たるまでなり。」と書かれています。

幸い名大では、全学向けの外国語の授業があり、教員も受講できました。「蘭日辞典」もありました。2年間受講させていただきましたが、残念ながら私は大海の中に沈んでしまいました。でも、その成果は講義にはいかされていて、蘭学の講義、今でも得意です。